くさいは、架空世界「マリオ世界」を舞台とする創作設定のひとつであり、異臭を放つ黒い球体をめぐる出来事と、その周辺で進行した調査・研究・社会的対立を描いた物語である。作中では、無料化されたタイムマシンや知覚共有技術の普及によって生じた副作用、人口の少ない地方自治体への移住、研究機関による解析、そして長期にわたる追跡調査などが重層的に語られる。
物語の中心となるのは、雪山県大志摩村に移住したマリオ「フェンス」の住居と、そこで発見される謎の黒い球体である。球体は強烈な臭気を放つだけでなく、破壊や解析を試みる者に不可解な影響を及ぼし、時を経るごとに周囲へ被害を拡大していく。作品は、この物体をめぐる個人の体験談、調査隊の記録、研究施設への寄付、最終的な放棄と再発見までを、年表形式に近い構成で追っていく。
題名の「くさい」は、作中で繰り返し問題となる悪臭を象徴すると同時に、出来事全体の不穏さを示す言葉として用いられている。
作中世界では、タイムマシンが無料化された202X年に、複数の知覚を共有できる新技術が開発された。専用のマスクなどを装着することで利用可能になるこの技術は、情報伝達や体験共有の面で大きな変化をもたらした一方、予期しない悪影響も引き起こしたとされる。
その後の時代では、社会や技術の発展が進む地域がある一方で、人口減少や時代遅れのインフラが残る地域も存在した。雪山県はその代表例として描かれ、人口約60万人の県内にありながら、人口約1,000人の田舎町・大志摩村が物語の主要な舞台となる。
2030年1月11日、マリオ「フェンス」は大志摩村へ移住した。フェンスは「白黒系」と呼ばれる架空の民族的集団に属し、周囲から嫌悪の対象とされる立場に置かれている。新居は3LDKで家賃3万円という条件の良い物件であったが、入居時点で強い臭気が残っていた。作中では、強力な消臭剤によって数年間は臭気を抑えられたとされるが、この事実がのちの異変の前触れとして機能している。
同年には、白黒系に対する友好政策を進めるべきか、あるいは排除すべきかをめぐる政治的議論が活発化していた。作品はこの社会状況を背景に、個人の生活問題がより大きな対立へと接続していく構図を示している。
2033年7月14日、旧大物とされる「あわら」と「国威」がフェンスの住居を取材で訪れた。夕食前、国威がトイレに立った際、あわらが強い臭気を訴えたことをきっかけに、室内から激臭を放つ黒い球体が発見される。球体は単なる汚損物ではなく、後の出来事すべての起点となる異常存在として描写されている。
その後、国威は夕食として出されたお好み焼きを食べ始めるが、球体の異常性はむしろ増していき、日常的な会話や食事の場面と強い対比をなす。
2033年7月17日、あわらは自宅で黒い球体を破壊した。しかし、内部から黒い煙が発生し、室内全体が煙に包まれると、あわらは姿を消したとされる。親友のおおいはこれを深く悲しみ、残された人々の間には不安が広がった。
数時間後に煙は収まったが、その後、調査隊が現地に入り、黒い球体の破片を回収する。ここから物語は、怪異の発生から調査対象としての管理へと段階を移す。
2033年7月20日、国威は球体の破片をコンピューターで解析しようとしたが、装置は破壊され、周囲に異臭をまき散らすようになった。夜には、古くなった治療薬が入った注射器を破片内部に刺すことで臭気が消えたとされる。これは物語全体の中でも特に奇妙な転機であり、異常存在に対する実験的介入の始まりでもある。